スマホのライトをつけて廊下を照らした。

割れたガラスに倒れたロッカー、昼間に来た時とは変わり果てた光景に息を飲む。

これだけ廊下が荒れ果てた様子なら、きっと妖が見えない人でも何かが起きている事に気が付くだろう。

ノブくんは妖が見える人だ、異変に気付いてきっと逃げようとしたはずだ。


「ノブくんは蠱毒をどこでどうやって作ってたんだろう」


スマホで学校内のマップを拡大しながら来光くんがそう呟く。

蠱毒の作り方は文献によって様々だけれど、複数の生き物をひとつの容器に閉じ込めて殺し合わせ、最後の一匹が呪いの媒介になる。つまり最後の一匹になる前に容器を開けると呪いは完成しない。

だからこの学校内で蠱毒を作るなら、人目につかない誰も寄り付かない場所が必要だけれど、それは昼の間に私たちで調べ尽くした。

妖を使った蠱毒ならなおさら閉じ込めておくための大きい空間が必要になる。


「お前らが呑気に昼飯なんて食ってなければ、日のあるうちにもっと詳しく調べられただろうな」

「その文句はあの馬鹿二人に言ってよね!」

「一緒に食ったお前も同罪だろ」

「ああもうッ、お前はいちいちうるさいんだよ! いいからとにかくノブくんを探そ────ッ!?」


バァン、と大きな音がして来光くんがその場に蹲った。

暗闇で方向感覚が狂い、壁に向かって勢いよく進んでしまったらしい。

慌てて駆け寄った。