悔しそうにきつく握られた拳を見た。


『でも僕のワガママで、お前らを危険な目に合わせる訳にはいかないんだよ!』


泣き出しそうな、それでも意志の強い瞳が私達を見つめる。

そうだ、来光くんはそういう人なんだ。誰よりも友達を大切に思う人だ。だからこそ反対したんだ。

正直、私は禰宜に頼まれたその瞬間、直ぐに心を決めることが出来なかった。禰宜たちがここまで被害を受けているのに、この世界へ来て一年しか経っていない私が太刀打ちできる相手ではないと思った。いつも危険な目にあった時、誰かに助けられ守られてきた。

でも、そうだとしても。

来光くんが私たちを大切に思ってくれている気持ちには誠実でありたい。困った時にはいつも力を貸してくれた来光くんの力になりたい。

そう思う気持ちは間違いなく、恐れよりも遥かに強い。


『行こう……! ノブくんを助けに!』


私の言葉にみんながニヤリと笑った。


『ノブくんのためじゃねぇ、来光のために協力するんだからな! この恩忘れんなよォ』

『禰宜が言ったんだよ、俺らになら任せられるって』

『最後に大手柄上げてやろうぜ、チーム出仕!』


見開かれた瞳に涙の膜が張って、来光くんはくしゃりと顔を歪めた。腕を目元に押し当てて震える声で「ありがとう」と呟く。


『もちろん恵衣も行くだろ?』

『当たり前だ。担当案件を途中放棄する訳ないだろう』


相変わらずな物言いに小さく笑う。

やるぞ、と突き出された慶賀くんの拳にみんなは「おう!」と突き返した。