「巫寿ちゃんのあの祝詞は、素質が祓詞に似てるんだ。多分蠱毒に対応するには、夏休みに禄輪さんが使ってたみたいな呪いを打ち負かすことに特化した祝詞じゃないと。……恵衣!」

「分かってる」


権禰宜を背負った恵衣くんが立ち上がる。

同じように禰宜を背負おうとした来光くんが「うわっ」と悲鳴を上げてバランスを崩し慌てて手を貸した。

二人で禰宜を横から支えて正門へ向かう。


「宮司、には……?」


顔を顰めた禰宜がそう尋ねた。


「置き手紙をして出てきました。それに、結界の外にいる嘉正たちが連絡してるはずです」


その言葉に安心したのか禰宜は目を閉じた。耳元で細い息遣いが聞こえて不安になる。


「来光! 巫寿! こっちー!」


結界の外で修祓にあたっていた皆が、正門の前で手を振っている。

錠がかかっていたはずの正門が開いていた。


「外はどうなってる!?」

「お前らが直ぐに中を塞いでくれたおかげで、外の残穢はあらかた祓えた! 千江さんとも連絡がついて、あと20分くらいで着くって!」

「門の鍵はどうしたんだよ!」

「泰紀が引きちぎった! 緊急事態だししゃーねーだろ!」


フンッと鼻息荒く力こぶを作って満面の笑みを浮かべた泰紀くんに、隣の嘉正くんは額を抑えた。

結界をぬけて外に出る。すかさず泰紀くんが禰宜を受け取ってくれて、私たちはどさどさとその場に座り込んだ。