走って戻れば来光くんが軽く頭を振ってこめかみを押えた。
「あんまり動かない方がいいよ……!」
「のんびりしてられないからね」
立ち上がろうと膝に手を置いた。
咄嗟に手を差し出すと来光くんは目を瞬かせる。そして少し鼻を赤くして笑うと「ありがとう」とその手を握って立ち上がった。
「恵衣、言葉通りの効果はちゃんと発動してるよね?」
「……ああ。問題ない」
霧散する残穢を一瞥して恵衣くんが小さく頷く。
「あともう一回くらいなら同じ御札を作れると思うんだけど」
「だったら結界の強度が下がってる場所を探してそこに貼るぞ」
「それなら正門だね」
「ああ。生徒玄関から吹き出していたから、その正面の部分が脆くなってるはずだ」
「オッケー、行こう」
呼吸のあった二人のやり取りが頼もしい。
これなら何とか禰宜達と合流するまで持ちこたえられるかもしれない────その瞬間、破裂音に近いガラスが割れる硬質な音が鳴り響いた。
全員が弾けるように振り返る。
見上げた先に白い何かが窓を突き破って宙に投げ出されているのが見えた。
私が理解するよりも先に二人が走り出した。