ため息をつけば怪訝な顔で見下ろされる。


「何だよ」

「……もっと柔らかい言葉にしないと、勘違いされちゃうよ」

「関係ないだろ」


苦い顔をした恵衣くんが ノートを勢いよく一番上に重ねた。

その衝撃で集めた課題がバサバサと床に落ちていく。


あ、と声を上げる。

落ちた課題と私の顔を交互に見てひどく面倒くさそうに息を吐いた恵衣くんがその場にしゃがんだ。

テキパキと集めて私の手から全部ひったくるとスタスタと教室の扉へ歩き出す。



「え、恵衣くん……!」

「お前鈍臭い。また落としてなくされたら迷惑だ。俺が行く」

「でも、私が頼まれたから……」



そもそも今落としてしまったのはほぼ恵衣くんのせいなのに。

そんなことを言えば睨まれるのが分かっているのでぐっと飲み込んで手を差し出す。


私には目もくれずスタスタと歩いていく恵衣くんの背中を追いかける。


階段の前まで追いかけたところで恵衣くんが足を止めて振り返った。



「何なのお前。俺が行くって言ってんだろ」

「でも私が任された仕事なのに、申し訳ないし」

「本当に面倒な性格してるな」



流石の言い様にムッとしたその瞬間、まとめた課題の三分の一が胸の前に突き出された。

条件反射のようにそれを受け取る。