破れた結界の前に着いた。吹き出す残穢に押し飛ばされそうになり体勢を低くして踏ん張る。

透明な膜に刃物で切り裂いたような亀裂が入っている。溢れ出した残穢は風に乗って空へ舞い上がり流されていく。


「来光! 恵衣! 大丈夫か巫寿ーッ!」


遠くから名前が呼ばれた。反対方向へ走り出した三人がこちらへ向かってきている。


「三人は来ないでッ、厄除けの札がもうないんだ! そこで流れ出した残穢を修祓して!」

「分かった!」


そんな返事と共にみんなが柏手を打つ音が聞こえた。


「巫寿ちゃんも嘉正たちと外に残って!」


塀に手をかけてじたばたと暴れながら来光くんがそう叫ぶ。


「私も行く! 一人で行く方が危険だよ! 足手纏いになるって理由以外なら尚更……ッ!」

「中で蠱毒が暴れ回ってるんだ、危険だよ! 僕も恵衣を回収して結界を修繕したら直ぐに出てくるから! ……何か自分で言っておきながら死亡フラグみたいだね!」

「全然笑えないよ!」


来光くんのおしりを押し上げる。塀に片足を引っ掛けた来光くんがまたじたばたと暴れて何とか塀の上で体制を整えた。


「ごめんちょっと格好つけた、本当は"分かった外で待ってる!"って言われたらどうしようって思った。足手纏いなわけないじゃん、同じ時間勉強した仲間だよ」


へへ、と笑った来光くんが上から手を差し出した。「もう」と苦笑いを浮べて差し出された手を握る。

弾みをつけて飛び上がった。