バスも電車も終わっているこんな時間に、どうやって高校まで行くつもりなんだろう。バスで30分はかかるから歩けば一時間以上かかるはずだ。

そう思っていると、鎮守の森を抜けてすぐに恵衣くんは参拝者用の駐輪場へ向かった。

なるほど、自転車で向かうつもりなんだ。

私の予想通り、まなびの社専用と書かれた札のかかった三台の銀色の自転車へ歩みよる恵衣くん。

あれ……三台?


「待てよ恵衣! 俺らも一緒に行くから!」

「勝手にしろ。邪魔だけはするなよ」


そんなやり取りの後さも当然かのように恵衣くん、嘉正くん、泰紀くんがサドルにまたがり、嘉正くんの後ろには来光くん、泰紀くんの後ろには慶賀くんが座る。

二人乗りが駄目だとかそういうのはさておき、私に残された座席は一つだけ。

バッと振り返ると荷台に座った二人が「ごめん巫寿」という顔をして私を小さく拝む。


額に手を当てて溜息をつきたい気持ちを何とか我慢して空いた一席へ歩み寄る。恵衣くんがぎゅっと眉間に皺を寄せた。私だって同じ気持ちだ。

それでも状況が状況だけに「さっさとしろ」と私を促す。恐る恐る荷台に腰を下ろした。ギシッと軋んだ音がして、慌ててサドルの後ろの部分を持つ。

恵衣くんがペダルを強く踏んだ。少しフラフラしたあとすぐにスピードに乗って真っ直ぐ進む。

後ろから皆もちゃんと付いてきている。

ふぅ、と小さく息を吐いた。