「恵衣!」


嘉正くんが険しい顔で名前を呼んだ。私たちは慌ててその背中を追いかける。

鳥居を出てすぐに広がる鎮守の森は月明かりを遮り、手を伸ばした先も見えないほど暗い。街灯の灯りだけじゃ心許なかった。


「いい加減にしろ、自分勝手が過ぎるぞ」


嘉正くんの苛立った声が響く。

恵衣くんは耳もくれずに歩き続ける。


「少しは聞けってば」

「うるさい黙れ。お前たちが散々やらかしたのは知ってる。俺はそんな馬鹿な真似はしない。俺には蠱毒に対する知識も対処するための技術もある」

「その驕りが命取りだってこと、この三馬鹿ですら分かってるのにお前は分からない?」


途端眉を釣りあげた恵衣くんが振り返った。一触即発の雰囲気に息を飲む。

小声で「僕を勘定に入れるなよ」と来光くんがいつものツッコミを入れる。悪いけれどそれどころでは無い。

「馬鹿野郎、止めとけ」すかさず泰紀くんが二人の間に体を滑り込ませる。


「言い争ってる場合じゃないだろ嘉正。お前もどうしたよ恵衣、カッカしちゃってらしくねぇぞ」


泰紀くんに抑えられた右肩を勢いよく振り切った恵衣くんがギッと歯を食いしばって私たちを睨んだ。


「俺にも……俺にだって目に見える結果が必要なんだよッ!」


勢いよく走り出した恵衣くんに「あッ!」と声を上げる。