酷いことを言われて酷いことをされて、突き放されて遠ざけられて。それでも一人ぼっちだった頃に差し出された手は間違いなく自分を救ってくれた。

来光くんの過去の話を聞いて、彼が友達という存在をとても大切にしているのはよく分かった。だからその手を絶対に振り払ったりしないのも分かる。

でも────。


「俺らが行っても出来ることはない。また迷惑をかけるだけだよ。同じことは繰り返さないって決めたはずだろ」


来光くんの気持ちは痛いほどに分かる。でもこればかりは、嘉正くんが正しい。

まだ私たちには知識のない分野、だから待機を言い渡された。駆けつけたところで出来ることはない。むしろ足を引っ張る可能性の方が高い。


「そんなの嫌ってほど分かってる! 分かってるよッ……」


唇を噛み締めた来光くんが俯く。

その時、



「勝手にやってろ。俺は行く」



立ちはだかる肩を押しのけて恵衣くんが歩き出した。