「ちょっ、おい待てよ! 二人とも!」
泰紀くんが二人の手首を掴んで引き留めようと引っ張る。次の瞬間ブォンと掴まれた手を振りほどいた二人。泰紀くんは目を点にした。
「お前らどこにそんな力あったんだよ……ってそうじゃねぇ! 一旦止まれ!」
「そうだぞ! てかお前らそんな猪突猛進だったか!? キャラぶれてんぞ!」
普段なら噛み付くはずのそんな言葉も全部無視して二人はズンズン歩いていく。
今度は嘉正くんが二人の前に立ちはだかった。前に立たれては流石に無視できなかったようで二人は足を止めた。
「恵衣はさておき来光、あれだけ叱られたのにもう忘れたの? また同じ間違いをするつもり?」
来光くんが僅かに目を見開き、フッと顔を逸らした。
脳裏に浮かぶのは夏休みの出来事。私たちは土地神の怒りに触れて、あの泰紀くんと慶賀くんが泣き叫ぶほどの災いをその身に受けた。
私たちは何とか災いからは逃れられたけれど、忘れられないくらい痛いビンタを食らって二度と同じ過ちは犯さないと心に決めた。
来光くんがあの日のことを忘れるわけが無い。
「ちょっと行って、禰宜たちに伝えるだけだから」
「例えそれだけだとしても駄目だ。それは身勝手な行動になるんだよ」
「……ッ、そんなの分かってるよ!」
来光くんが声を張り上げた。
「でも、でもさ! 今は嫌われてたとしても、僕の親友が危ないんだよ……ッ!」