来光くんと恵衣くんが手当たり次第に書物をひっくり返していく。
サッサッとページをめくる音が静かな本殿に響いた。
「わ、悪いことってなんだよ……! はっきり言えよ!」
「一度薫先生の別荘の本棚で、見た事があるんだ。一般的には虫とか小動物を使って行う呪術なんだけど、複数の妖で行う方法もあるんだって」
これだ、そう言った恵衣くんがページを開いた本を差し出した。
来光くんがそれを確認して悲痛な面持ちで目を瞑るとひとつ頷いた。
「古代中国で用いられた呪術の一つだ。生き物を共食いさせて勝ち残った一匹を呪いの媒介にする、最悪の呪い」
ふぅ、と息を吐くと私たちの前に本を滑らした。
「────蠱毒だ」
祭壇に灯したロウソクの灯りが揺れる。
反射した火の光で来光くんの瞳がゆらりと赤く光った。