付喪神、長い年月を経た道具に魂が宿ったもので、地域によっては神や精霊として崇められている存在だ。から傘小僧や化け提灯なんかも付喪神の類にあたる。
名前には神と付いているけれど妖の一種だ。
「このパンフレットによると、創立時から使用されている道具があの学校内にはある。だったら付喪神がいるはずなのに、僕達は一度も見かけなかった」
校舎入口、学生の下足場を入ってすぐのところにガラスケースがあったのは覚えている。古そうな小物や写真が沢山陳列してあった。
そうか、あれは全て付喪神になった物たちだったんだ。
あれ、でもじゃあどうして付喪神の姿が見えなかったんだろう。物から付喪神になった道具は、本体そのものが壊れるか物に宿った魂が傷付けられない限り消えることは無い。
あのショーケースの中にあった置時計や小物は壊れているようには見えなかったけど……。
「じゃあ付喪神たちはどこへ行ったと思う? 道具本体は壊れていないけど姿が見えない。つまり付喪神は分け合って姿を現すことが出来ない状況にあるってことだ」
嫌な胸騒ぎがした。
「もしかしたら、僕らが思っているよりも遥かに悪い事が起きているかもしれない」
そう呟いた来光くんに、私たちは戸惑い気味に視線を合わせる。