脅迫まがいの詰められ方をした泰紀くんは膝を抱えてしくしく泣き真似をしている。慶賀くんがよしよし可哀想にと背中を撫でた。


「あ、ごめん。悪気はない。ただ泰紀にしてはなかなかいい所に気付いたからつい興奮しちゃって」

「お前らヤバい奴の目だったぞ」


あはは、と頬をかいた来光くんは私たちの中心に学校のパンフレットを広げた。


「建物に妖がいないことって、さして珍しい事ではないじゃん? 妖だって住む場所には好きこのみあるしさ」


来光くんの言う通り、妖にも住む場所には違いがある。

深海魚が淡水の川では生きられないように、種類によって住みやすい環境があるのだと授業で習った。


「それを踏まえて、これ見て」


来光くんがパンフレットを指さした。


「西院高校は2017年に百周年を迎え、創立時に市長より寄贈された置時計や記念品は校舎入口にて展示された……?」


代表して私が読み上げる。

この文の何が変なんだろう?


「てことはさ、あの学校には絶対に妖がいるはずなんだよ。"百年"経ってるってことは」

「何が────あ」


何がいるの、と聞き返す前に気が付いた。


「付喪神……!」


そう、と来光くんが頷く。