とにかく男子勢曰く、和式であれば何処にでも現れるらしい。


「あの学校でやな事でもあったんじゃねーの? 妖がいない場所なんて一周まわって怖ぇよ」


はぅ、と欠伸をこぼした泰紀くんがそう呟いたその瞬間。


「泰紀今なんて?」

「お前今なんて言った?」


恵衣くんと来光くんの声が揃った。

え?と目を瞬かせた泰紀くんに二人は詰寄る。目をかっぴらいた来光くんが激しく肩を揺すった。


「今なんて言った!? ねぇ泰紀!!」

「え、ええ? 俺なんか不味いこと言ったか?」


焦る泰紀くんの胸ぐらを恵衣くんが掴み捻り上げる。


「三秒前に自分が吐いた言葉も覚えてない鳥頭なのかお前は。いいからもう一度言え」


いつにもまして怖い顔をした恵衣くんに「ひぃッ」と泰紀くんが震え上がる。


「な、なんだよ二人してッ! 妖がいない場所なんて一周まわって怖いつっただけだろー!」


泣きそうな顔でそう叫んだ泰紀くんに、二人は顔を見合わせるならパッと離れた。

二人してがさごそと本を漁り始める。

私がついでに持ってきた社務所に置きっぱなしにしていた西院高校のパンフレットを広げた来光くんはグッと顔を近づけて何かを探している。


「恵衣、やっぱりそうだ。創立から百年以上経ってる」

「そうか、となるとやっぱり────」

「ちょい待って二人とも、わかるように話して。じゃないと泰紀が浮かばれない」