「泰紀それ向きが違う。もうちょっと右」
「こうか?」
「行き過ぎ行き過ぎ、ちょっと左に戻して」
約束の時間になって社務所に集った私たちは、千江さんに頼まれて本殿で神事の用意をすることになった。
恐らく権宮司たちが持ち帰ってくるであろう呪いの媒介を修祓するための神事だ。
そういう神事は初めてなので、借りた教本を見比べながら祭壇を整えて行く。ああでもないこうでもないと言いながら三十分くらいかけてやっと完成させた。
千江さんの合格も頂戴し、祭壇の前に丸くなって座る。真ん中には禰宜から借りた本を広げて皆各々に覗き込む。
「俺も実は気になってたんだよね、最後まで任せて貰えなかったこと。タイムリミットが迫ってるとは言え、やっぱり任された仕事は最後までやり遂げたいじゃん」
「俺もせっかくなら最後まで見届けてぇかな」
「俺も俺もー!」
集まる前に三人で呪いについての調査を続けていたことを話せば、自分たちもやりたいと名乗り出てくれた嘉正くんたち。
結局やはりみんなで呪いを突き止める調査を続けることになった。
わいわいと賑やかな雰囲気で始まって、恵衣くんは物凄く迷惑そうな雰囲気を出していたけれど、来光くんと議論するうちに直ぐに真剣な顔になる。
私も負けてられないな、と気合いを入れ直した。