となると疑われる呪いの種類はどの世代も知っているようなものということになる。
なるほど、と来光くんが素直に指摘を受け入れた。
お?と目を丸くする。珍しくいい雰囲気だ。
「となると呪いの種類は大衆にも知れ渡っているものか、調べれば素人でも出来るものの二択。今回の呪いの規模からして、調べれば素人でも出来るものの確率が高くなる」
恵衣くんが脇に広げていたもう一冊の本を一度閉じて、表紙を見えるように私たちに差し出す。二人してそれを覗き込んだ。
「呪詛完全マニュアル?」
タイトルを読み上げて眉をひそめた。
なんとも物騒なタイトルだ。
「普通に世の中に出回ってる代物だ。ざっと中を見たところ、修験道に基づいた呪術が記されている。かなり詳細にな」
修験道……聞き慣れない単語に首を傾げる。
自分で調べろ、と睨まれて首をすくめながらスマホで検索する。
修験道、古代日本で山を崇拝する山岳信仰と密教と道教の要素が混ざって成立した日本独自の宗教のことらしい。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」でお馴染みの邪気を祓う九字切り────九字護身法がその修験道の作法のひとつらしい。
へぇ〜、と頷きながらもう一度本を覗き込む。