「ノブくんも、見えたね?」

「ハッ、ほんま何も変わっとらんなお前」

「でも一緒に色んな話したじゃん……ッ!」

「アホらし」


ノブくんは背を向けたまま鼻で笑った。


「俺が"妖怪が見える"って言うたんは、お前に近付いて利用するためにそう言うたんや。そんな事にも気付けんとか、ほんまにおめでたい奴やな」


吐き捨てるようにそう言う。


「おいノブくんいい加減にしろよッ!」

「言っていい事と悪い事も分かんねぇのかノブくん」

「ノブくんノブくん煩いねんお前らッ! 外野は黙っとれ!!」


勢いよく走り出したノブくんは、あっという間に走り去ってしまった。

残された私たちの間に気まずい沈黙が流れる。



「……とりあえず時間ねぇし、行くか」


口火を切った泰紀くんに、皆「……だね」「そうしよう」と頷く。

歩き出した私達に「ちょっと待って皆」と呼び止めたのは来光くんだった。振り返ると来光くんが、眉根を下げて困ったように笑いながらつま先を見つめていた。


「我ながら嫌になるよ。この学校にノブくんが通ってるって知った時点で、真っ先に疑ってしまったんだ。友達なのに……いや、もう違うのか」


え?と聞き返す。

だってその言い方じゃまるで。

はぁ、と息を吐いた来光くんは天を仰いだ。



「────恐らく犯人は、ノブくんだ」