悔しそうにその手で自分の太ももを叩いた。

歯を食いしばり、怒りの籠った血走った目で来光くんを睨む。


「俺はお前のせいでッ、俺がどれだけ、俺が……ッ!」


血走った目から大粒の涙がこぼれた。堪えるような嗚咽に皆が戸惑う。

離せや!とみんなの手を振りほどいたノブくん。乱暴に目尻を拭って背を向けた。


「許すとか許さんとか、お前が言える立場ちゃうやろ! 二度とに俺の前に現れるなッ!」

「何で……何でそんな事言えるんだよ! 先に裏切ったのはノブくんだろッ!」


その背中に来光くんが叫んだ。

ゆるりと振り返ったノブくんの目はぼんやりとしていて焦点が合わない。

何故か背筋がぞわりとした。


「お前やって俺の事、裏切った癖に」


来光くんが……裏切った? 一体どういうこと?

だって最初に裏切ったのは、あの日友達を売ったノブくんなんじゃ。


「お前はそそくさ逃げ出したけど、俺は今までずっとここにおったんや」


感情のない冷たい声だった。


「どういう……事?」


静かに尋ねた来光くん。

いいや、これは聞いたんじゃない。その瞬間、来光くんも私達も答えは何となく分かっていた。

分かっていた上で信じられなくて信じたくなくて、違っていて欲しいそうであってほしくない、そう否定したかったから聞いたんだ。