あの日────二人の友情に亀裂が走った日。
「あの日……ノブくんに殴られて凄くショックだった。裏切られたと思った」
"自分を売るか友達を売るか"
そんな非道な問いかけに対して、来光くんは友達を守ることを選んだ。でもノブくんはそうじゃなかった。
ノブくんのその選択が、どれほど来光くんを苦しめたのか想像もできない。
「でも、少し前の自分だったら……ノブくんと同じ選択をしていたかもしれない。だからあの時、ノブくんがどんな気持ちだったのか分かるんだ」
来光くんの声はどこまでも優しかった。
許せない事をされた。裏切られた。でも来光くんは、まだノブくんのことを友達だと思っている。信じている。
それは自分の弱さを知っているからこそ、できることなんだと思う。
「やっぱり心のどこかではまだ許せないけど、でも僕は────」
「……許す?」
ずっと固く口を閉ざしていたノブくんが呟くように繰り返した。
バッと顔を上げた。怒りに満ちた瞳だっだ。
「許すって何? お前が俺を許す? ふざけんなやっ!」
突然怒鳴り声を上げて駆け出したノブくん。
その手が来光くんを掴む前に、皆がその間に入った。慶賀くんと泰紀くんが険しい顔で肩を押えた。
伸ばした手は宙を掴む。