「慶賀……先週の話し合い聞いてなかったのか? 媒介は目に見えるような大きい物じゃないかもしれないから、明るいうちに場所の検討をつけたいねって話しただろ」

「そんな話したっけ?」

「お前の記憶ではされてない事はよく分かった」


えへ、と両頬に頬を当てて体をくねらせた慶賀くんの頭に容赦ない手刀が落ちる。


「薫先生に任務に連れてかれた時、よく言ってたでしょ。人が多い場所は産土神の力が強いから、良くないものは人気(ひとけ)のない場所に集まるって」


おそらく中学時代に「経験を積ませるため」と称してあちこち任務に連れ回された時の話をしているのだろう。

そういや何か言ってたな!と指を鳴らす。

中等部の頃のその経験が私にはちょっと羨ましい。私が連れていかれたのは入学式の日の一度きりだ。

もう連れ回すのは辞めてしまったんだろうか。

いや、そういえば一学期の半分は入院して、二学期の後半は学校閉鎖になっていたからそもそも機会がなかったんだろう。


「モノ自体に意思はないけど、術者を快適な環境……人気のない不浄な場所へ導こうとする力が働くんだってさ」


来光くんが小さな手帳を覗き込みながらそう言う。

呪いについてまだ詳しく習っていない自分たちにしては、かなり絞り込めた方なんじゃないだろうか。