だから私たちはこれから、西院高校の昼休みに合わせて学校に乗り込む。


「阿呆らしい。服装ひとつで浮き足立って、先が思いやられる」


制服に着替えた恵衣くんがネクタイを締めながらそう悪態をつく。

またそんな言い方して、と苦笑いをうかべる。


「なぁネクタイの結び方分かんねぇ。誰かググッてくれ〜」

「なんか固結びになったんだけど!」

「こうして……こう? あれ? やっぱりこう?」


何をどうしたらそうなるのと突っ込みたくなるほどぐるぐる巻きになったネクタイに右往左往する皆。

鏡の前で首を捻る嘉正くんに歩み寄った。


「巻き付けた方を裏から通すんだよ」


そう助言すれば意外そうに目を瞬かせる。


「ネクタイの結び方知ってるの?」

「あ、うん。お兄ちゃんがね、高校生の頃は制服がネクタイだったんだけど……"毎朝結んで欲しいから覚えて"って」

「あー……なるほど。あのお兄さんなら言いかねない」


でしょ、と肩をすくめる。


「巫寿、結べるなら俺のやって〜」

「え、巫寿できんの? なら俺のも頼んでいい?」


顔中にネクタイを巻いた慶賀くんと泰紀くんが横に並ぶ。笑いながら「いいよ」と手を差し出した。

しかしネクタイを受け取ろうとしたその瞬間、別の手がそのネクタイを横からひったくる。


「神職たるものそれくらい自分でやれ」


険しい顔をした恵衣くんだった。