来光くんにも見えやすいようにスマホを少し傾ける。「綺麗だねぇ」と息を吐いた来光くんに、思わず口角があがる。
俺にも見せて!と慶賀くんが身を乗り出した。
ゴホン、と禰宜が咳払いをして慌てて口を抑える姿にくすくす笑う。すすす、と静かに横に座った慶賀くんにも見えやすいようにスマホを傾けた。
ほぇ〜と感嘆の声をもらす慶賀くんにやっぱり嬉しくなる。
誰が見てもお母さんの舞は息を飲むほど美しいという事だ。
舞が終わってスマホの電源を切ると、二人は「え?」と不思議そうな顔をして私を見た。
「巫寿のは? 見ねぇの?」
「見比べて研究するんだよね?」
至極当然の質問に目を逸らす。
二学期の奉納祭で皆に神楽舞を見られた時は全然恥ずかしくなかった。いや、少し恥ずかしかったけれど、舞台の上で披露できるくらいはたくさん練習したし、練習した分自信にも繋がった。
でも鼓舞の明の舞は練習を初めて数週間だ。自分がまだそこまで上手くないのは自覚しているし、お母さんと比べると明らかに劣っているのは分かっている。
でもお母さんと比べられて自分の下手くそさを皆に認知されてしまうのがかなり恥ずかしい。
私のそんな気持ちに気付いたのか、来光くんがニヤニヤ笑いながら頬杖をつく。
「第三者に見てもらうことで、新たに気付くこともあると思うんだけどなぁ」
「それは、そうだけど……」
来光くんってたまに凄く意地悪だ。
慶賀くんと泰紀くんの親友なだけある。
「巫寿って"私は全然"とか"まだまだ"とかよく言うけど、もっと自信もった方がいいと思うぞ?」
「そうそう。もっと言祝ぎを高めないと。あの聖仁さんのお墨付きなんだから胸張りなよ」