しだれ桜が春の陽気に吹かれたように靡く黒髪。その指先はパッと桜が咲いたように可憐で、神楽鈴の音色は芽吹きの喜びを奏でているようだった。

足音はない。人ならざる者が地上に舞い降りたような清廉さに息をするのも忘れてしまう。

桜の精霊そのものだった。


「ほんま何度見ても惚れ惚れするわ。泉ちゃんの神楽舞は」

「はい。本当に……」


お母さんの舞はまだ数回しか見たことがないけれど、それでも別格なのが分かる。

いつもこれを見る度に「どうしてその血は引き継がれなかったんだろう」とちょっと落ち込む。

せめて何か一つでもいい所を引き継いでいればなぁ。


「この動画あげるし、今後は泉ちゃんの舞を参考にしてみ」

「ありがとうございます……!」


まるで出口が見えなかったこれまでに比べれば、目指すものが出来ただけでも随分違う。

頑張るぞ、と身を引きしめた。