居間に顔を出すと案の定恵衣くんがこたつの上に教科書を広げて勉強しているところだった。
ちらりと目だけで私を見た恵衣くんは顎で自分の前を示す。お邪魔します……と身を縮めて向かいに腰を下ろす。
「提出は一週間前だったはずだろ」
ノートに文字を書きながら淡々とそう言う。
「すっかり忘れてて……」
「面倒をかけるな」
予想通りの返答にちょっとだけ笑いそうになって堪える。なんだよその変な顔は、と睨まれて慌てて首を振ってプリントを広げた。
予想外にも恵衣くんは丁寧にレポートの書き方を教えてくれた。
「まとまりの無い言葉で書くな」「何だその幼稚な語彙は」「教えて貰ってるならもうちょっと出来のいいレポートを書く努力をしろ」
前言撤回、やっぱり口が悪い。でもそのおかげで丑三つ時には何とかレポートの形になった。
「まぁ、いいだろ」
恵衣くんのお許しも出て、深く息を吐いた。
「ありがとう恵衣くん、本当に助かりました……」
「別に」
ふんと鼻を鳴らした恵衣くんはまた教科書に目を落とした。
「恵衣くん、いつもこんな時間まで勉強してるの?」
シャーペンを筆箱に片付けながら尋ねた。
「大切な試験の前に呑気に遊び回ってグースカ寝れるお前らの神経を疑う」
「またそんな言い方して……」