「まあでも出仕は暗記したことそのまま書くだけだから、しっかり対策してれば落ちることなんてないよ。最悪、出仕だけは毎年絶対に追試してくれるから安心していいと思う」
そうなんだ、と少し肩の荷が降りる。
でも出仕は安心できたとしても、問題は四級の試験だ。階位は座学試験だけだけれど、階級は実技試験になる。
「実技試験怖いよね……。どんな事するんだろ」
来光くんが青い顔でため息を吐く。
やめろー!それ以上は言うなー!と慶賀くんが頭を抱えたその時、
「どうしたの? 皆して青い顔して」
「元気だったか一年ズ!」
「どうせ学年末の昇階位試験のことだろ」
「もしくは神社実習だな」
皆して振り返り、見上げた先にいた人たちに「あっ」と声を上げる。
二年生の先輩達が夕飯を乗せたお膳を持ってそこに立っていた。
「聖仁さん! 頼むよ聖仁さん、去年の過去問教えて〜!」
泣きついた慶賀くんに聖仁さんは「やれやれ」と肩をすくめる。
榊聖仁さん、私が所属する神楽部の部長で二学期は幾度となくお世話になった。
「巫寿、年賀状ありがとな!」
「瑞祥さんのも届いてました……! ありがとうございます」
私の隣に座ったのは高い位置で結った一つ結びが良く似合う、同じく神楽部の先輩で副部長の夏目瑞祥さん。
「瑞祥足開いて座らない」「分かってるってば」「言われる前に閉じなさい」「ひひひ、どこ見てんだよ聖仁の助平〜」そんなやり取りを繰り広げる聖仁さんと瑞祥さんをにやけそうになりながら見守る。