「い……いやまぁ、そんなに怒ってやるなよ来光〜。悪気があった訳じゃねぇんだしよ〜。ハハハ……」
「そ、そうだよ来光。疲れてるのは本当だし。今日はかなり朝早かったから、俺も眠くて」
だよな、うんうん、と二人は視線を泳がせる。
そんなふたりの態度に、来光くんは疑いの目を向けた。
「もしかして、お前らも寝てたの……?」
「いやいやいや! 慶賀よりかはちゃんと聞いてたって! サマーキャンプで妖怪に遭遇したんだろ!?」
「お、俺だってもう少し先の方までは頑張って起きてたよ」
まさか……来光くんが語り終わったあと、みんなが俯いていたのは居眠りしていたから? かける言葉がなくて俯いていたんじゃなくて、ただ単に眠っていたから? さっきの慶賀くんのいびきで飛び起きたって事?
ひくひくと唇の端を引き攣らせる慶賀くんをみんなが慌てて宥める。
「夢の中ではちゃんと聞いてたって!」
「で、結局その話の結末はなんなの?」
「大変な思いしたんだね。話してくれてありがとうね来光」
皆……それって逆効果な気が。
「ふ、ふ……ふざけるなーッ!」
天を仰いでそう叫んだ来光くんが血走った目で私たちを睨んだ。傍にあった枕を掴んでブンブンと振り回す。
うわぁッ!と悲鳴をあげて私たちは逃げ惑う。