私たちが通う神役修詞(しんえきしゅうし)高等学校(こうとうがっこう)、通称神修(しんしゅう)は普通の高校とは少し違う。

表向きは神道系の宗教学校として設立されているが本来の姿は、"言霊(ことだま)の力"と呼ばれる口に出した言葉をその言葉通り(・・・・)に操ることが出来る力を持つ学生が、その力の使い方を学ぶ場所だ。


その学習成果を測るのが学年末に行われる昇階位試験で、私たちはその試験で直階(ちょっかい)の四級を取得するのが進級の条件になっている。

平たく言うと直階四級に合格しなければ留年ということだ。



「巫寿って出仕(しゅっし)も同時受験するんだっけ?」

「そうなの。出仕が受からなきゃ直階に受かっても合格にならないって(くゆる)先生から言われて、不安で……」


直階の一つ下の階位である出仕は、本来なら神修の中等部を卒業する段階で試験を受けて取得する。

高等部から入ってきた私は出仕の階位を持っていないので、同時受験することになったのだ。



「大丈夫だよ、出仕の試験は名前書いて出せば受かるって言われてる────はずなんだけど、不合格で追試受けた奴らが二人いたな……」



嘉正くんは呆れた目で慶賀くんと泰紀くんを見る。どうやら去年二人は試験に落ちて追試を受けたらしい。



「あれのどこが"名前書いて出せば受かる"内容なんだよ!」

「そうだよ! 先輩も先生もみんなそう言うから信じて名前書いて出したのに!」

「その件に関しては俺も悪かったと思ってる。まさかクラスメイトがそこまで馬鹿だったとは思ってなくて。あの時俺がちゃんと勉強しろって伝えとけば良かったね」



申し訳なさそうに微笑んだ嘉正くん。そうだよ嘉正、と二人が唇をとがらせる。

二人は気づいてないみたいだけど、嘉正くんさらりと貶してない?