「多分皆と揃って昇級出来るから、安心しなよ」


薫先生には僕の考えが全部お見通しだったらしい。顔を伏せるとぽんと頭を叩かれた。


もし僕が昇級出来ないことを知ったら、皆は「どうして?」と思うに違いない。

昇級できない理由はひとつしかない、神役諸法度に触れる罪を犯しているということ。この世界で人を呪うことは大罪だ。

正直一緒に昇級が出来ないなんて、そんなことはどうでもいい。ただいつかその時が来て、僕が過去に人を呪ったことがある事実を皆に知られるのが怖かった。


3年生の時の社会科見学で起きた事件は、僕についてまわった。みんなはそれを知って、僕を気味悪がり僕を除け者にした。

いつかまたそんな風になるんじゃないかって、ずっと心のどこかで不安を抱えていた。


「そう思える友達に出会えて良かったね────あ、そうだ。まだ確定じゃないけど、来光にはこっそり教えとこうかな」


ふいにそう言った薫先生に首を傾げた。



「来年から、クラスメイトが一人増えるよ」

「えっ! 本当!?」

「ホントホント。しかも女の子、紅一点だよ」


編入生、しかも女の子。慶賀や泰紀が騒ぎそうだな、と小さく笑った。


「いきなり知らない世界に来て大変だと思う。その気持ちを理解してあげられるのはやっぱり来光だけだと思うから、色々助けてあげてね」


張り切って返事をすれば薫先生は眩しそうに目を細めた。

「友達は大切にしなよ」帰り際にそんな言葉が聞こえて、振り向くと薫先生は珍しくデスクに向かってペンを動かしていた。


はい、と返事をすると先生は背を向けたままヒラヒラと手を振った。