部屋に帰ってもつまらないし、もう少し教室に残ろうかな。
暇つぶしにはなるだろうと貰ったばかりのプリントを広げたその時。
ピシャンッ、と勢いよく教室の前の扉が開いた。
驚いて顔を上げると、ちっちゃい馬鹿が立っていた。
「志々尾くん……?」
「だから慶賀でいいってば! てか来光お前、何やってんの?」
「え……? いや、退屈だしもうちょっと教室残ろうかなって」
「はァ!?」
眉を寄せた志々尾くんがずんずんと僕の机へ歩いてきた。そして勢いよく机を叩いて身を乗り出した。反射的に身を縮める。
「遊びに行くぞって言ったじゃん! 何お前、俺らと遊んだことないのにコイツらと遊ぶのは退屈とか思ってんの!?」
「えっと……でも僕らまだ友達でもなんでもないよね」
遊びに行くぞ、という声はちゃんと聞いていたけれど、でもそれは僕以外の友達に向けた言葉なんだと思っていた。
だってまだ知り合って半日も経っていないんだから、知り合いと呼べるかすら怪しい。
ぽかんと口を開けて固まったちっちゃい馬鹿。すると「アハハッ」と愉快そうに笑う声が廊下から聞こえてきて、筋肉馬鹿と優等生が顔を覗かせた。
「来光さてはお前、前の学校に友達いなかったんだろ!」
筋肉馬鹿そう言い、僕があからさまに傷付いた顔をしたのが分かったのか、優等生がその頭を叩いた。
「バカ、言い方。ほんとデリカシーないんだから」
「だからって殴るこたねぇだろ!」