「うおー!? 何お前だれ!?」

「すげぇ! 編入生とか初めて見た!」

「二人ともうるさい。新学期から編入生が来るって、薫先生から前もって連絡来てたでしょ」


僕が挨拶するよりも薫先生が「新しいクラスメイトを紹介するよ」と言うよりも前に、教室に入った途端物凄い勢いで囲まれた。

その迫力に気圧されていると、薫先生が僕の背中をぽんと押す。


「嬉しいのは分かるけど落ち着きな〜。お察しの通り、今年から一緒に勉強する松山来光くんね。適当に時間あげるから交流しな」


薫先生のそんな声なんてもう既に耳には届いておらず、我先にと自己紹介が始まった。

自己紹介を聞かずとも、薫先生が称した"優等生"と"筋肉馬鹿"、"ちっちゃい馬鹿"が誰なのか分かった。


"難あり優等生"は恐らく、一番隅の席で僕には目もくれず読書に耽っている冷たそうな面持ちの彼なんだろう。


自己紹介という名の質問攻めにあい、やがてその日は解散になった。

さようならの挨拶とともに「よっしゃ遊びに行くぞ!」と飛び出して行った筋肉馬鹿とちっちゃい馬鹿。そして呆れ気味にその後を追って出て行った優等生クン。


あれほど騒がしかった教室が、一気にがらんとして静かになる。

さっきまでは興味津々で話しかけてきたくせに、学校が終わるとこれだ。コロッと態度を変えられるのはもう慣れたけれど、結局ここでもそうなんだと小さく息を吐いた。