「────あっ、ちょっといきなり何なんですか貴方!?」
「なんだお前は! 不法侵入だぞ!?」
そんな騒がしい声に目が覚めた。
何日経ったのか何週間経ったのかあるいは数時間なのか、締め切られた遮光カーテンのせいで今がいつなのか朝か夜かも分からない。
ただ今日もいつもと変わらない一日が始まるのかと思う間もなく、騒がしい声はどんどんこちらへ近付いてくる。
「うわ、こりゃすごい。間違いなく書宿の明が呪いに転じてるね。それもかなり強い。修祓専門の俺がわざわざ動員されるわけだ」
両親の声でも親戚の声でも知り合いの声でもない、若い男の声だった。
「薫さん! あなたの任務は解呪までですから、終われば直ぐに引き上げてください。そこからは我々本庁の仕事です。決して余計な事はしないでください」
「あはは、失礼だな。余計な事なんてしないってば」
扉越しに聞きなれない単語が飛び交っている。若い男の他にももう一人誰かがいる。
布団に潜り込んで枕に顔を押し付ける。
きっと今日も、お母さん達がどこからか連れてきたカウンセラーが来たんだ。そのうち「先生とお話しましょう」「悩んでることがあるんだよね?」なんて語りかけてくるに決まってる。
もう僕に構わないで。お願いだからほっといてよ。