「お前は本物の死神や……ッ!」
怯え、恐れ、蔑む目で僕を睨んだ。
身体中ががくがくと震えた。違うと頭は否定しているはずなのに、事実のように重くのしかかる。
だってそう、化学で何一つ証明出来ないじゃないか。歴史の教科書にそんな能力を持った人物が実在したなんて書いてないじゃないか。
ありえないんだ、ありえるはずがないんだ。
その時、視界の隅を黒い何かが横切った。少し顔を動かす。小鬼だ、餓鬼と呼ばれる妖なんだと前にノブくんと二人で調べて知った。
そして気が付いた。
ああ、そうか。そうだったのか。
僕は他の人たちがありえないと思っている存在を、昔からずっと見てきたんだ。
ありえないのはその存在で、その存在を見ることの出来る僕。
昔からおかしいのは僕だったんだ。
だから両親も不仲で、友達もできず、唯一できた友達にも裏切られて、転校してもずっといじめられてきたんだ。
僕が、やったんだ。
そう気づいた瞬間、二人を押しのけて駆け出した。