一階の下足場につくと、廊下が騒がしいのに気がついた。一階には保健室とひまわり学級の教室、それと職員室がある。

騒がしいのは職員室の方だった。

なんだろうと思って歩みを進めると、たくさんの先生たちが次々と慌てた様子で職員室へ駆け込んでいくのが見えた。

学校に残っていた生徒たちがその異変に気がついて集まり始める。


なになに、どうしたの、何があったの?

そんな生徒たちの不安げな声と、職員室の中から聞こえる慌ただしい声に廊下は騒然としていた。


「職員室を覗くな! 早く帰れ!」


四年の学年主任で学校一怖いと噂されている先生が廊下にいる生徒たちに向けてそう怒鳴った。

けれどいつもと違う雰囲気に、皆は動こうとしなかった。


「救急車!」


騒ぐ声に紛れてそんな声が聞こえた。

同じようにそれを聞いた生徒たちがいっそう騒ぎ立て始める。



ばくん、と心臓が嫌な音の立て方をした。

先生たちが何人か廊下へ出てきて、必死に生徒を帰宅するように促した。

皆は何とかして職員室の中を覗こうと躍起になる。


五分も経たないうちに遠くから緊急車両のサイレンが鳴り響く音が聞こえた。

その音は真っ直ぐと学校の方へ近付いてきて、皆は釣られるように正門の方へバタバタと動き出す。


救急車は正門を通って、下足場の前で停車した。