「お、おいッ!」
ある日の放課後、帰り支度を整えていると急に声をかけられた。恐る恐る僕が振り返ると、何故か怯えたように僕の様子を伺うクラスメイト二人が立っていた。
僕が視線を合わせると二人はいっそう顔を引き攣らせた。
「あ、あの噂……ほんまなんか」
口を開いたかと思えばそんな質問で、眉間に皺を寄せて俯く。
「お前が"死ね"って書けば人殺せるってほんまなんか……!」
強く手を握りしめた。
そんなわけない。そんなはずがない。そんなことがあってたまるか。
だって現に僕が死ねと書いた三人はまだ入院しているけれど生きている。行方不明の三人だって、死んだなんてニュースは聞いていない。
たまたま僕がノートに書いた後にそうなっただけ。単なる偶然だ。
「そんなの……出来るわけ、ないでしょ」
「で、でも行方不明になった奴も入院してる奴も全員お前の日記に名前が書かれてた!!」
「お、俺らの名前も……書いたんやろ!?」
そう言われて「ああそういうことか」と納得した。
僕の日記に名前が書かれているから怖いんだ。自分がこれまで僕にしてきたことなんて棚に上げて、今度は自分に害が及ぶかもしれない状況になって怯えているんだ。
なんて卑しくて醜くて浅ましいんだろう。
「け、消せよ! 俺らの名前!!」
「そうや! そもそもノートに人の悪口書くのは人間として良くないやろ!」
人間として最悪で最低な事を僕にしてきたくせに、お前らがそんなことを言うんだ。
胸の奥がどんどんすうっと冷めていく。これまでこんな奴らに怯えていた自分が馬鹿みたいに思えた。