『山本と濱谷と田辺と……次は澤田だって』

『怖いね、男子ばっかじゃん』

『ねぇねぇ。そのメンバーってさ……』


近くの席でヒソヒソと話していた女子たちそんな声が聞こえて背中に視線を感じた。そっと振り向くと目が合って、女子たちは慌てて『トイレ行こう』と教室を出ていく。

出ていったはずなのに、教室の至る所から視線を感じる。振り向いて首をめぐらせた。クラスメイト達は目が合う前にサッと顔を背ける。


"そのメンバーってさ"

その言葉の続きを想像して、まさかと首を振る。

いやでもそんなことが。だって僕は何もしてない。ただ日記に書いただけだ。ただ日記に……。


その日急いで家へ帰って、直ぐに日記を広げた。

勢いのまま綴った名前は九人。

そのうち死ねと書いたのは山本、濱谷、田辺。消えろと書いたのは澤田、丸山、井上。居なくなれと書いたのは森口、小林、木田。

死ねと書いた三人が入院していて、消えろと書いた澤田が行方不明になった。丸山も今日は結局学校へ来ていない。


ありえない考えが脳裏に浮かんで「そんなまさか」と鼻で笑った。

ただの偶然だ。だって僕は日記に名前を書いただけだ、ただそれだけ。名前を書いただけで他人を入院させたり行方不明にさせたりなんて出来るはずがない。

だってもしもそんなことが出来たなら、そんなのまるで"呪い"じゃないか。



その次の日、もっとやつれた顔の担任が教室へ入ってきて告げられたのはクラスメイトの丸山と井上が行方不明になったという事だった。