「はい、ほな朝の会始めます。日直さん号令」


いつも通りの担任の掛け声で、日直当番の生徒が面倒くさそうに「きりーつ」と号令をかけた。

いつも通りだ、何も変わらない。

席に着くと担任が「今日の休みは〜」と独りごちる。


「山本と濱谷、それから三好やな」

「センセ〜、田辺もまだ来とらん!」

「田辺はさっきお母さんから連絡があって、今日は休みなんや」

「ええー! アイツらも!?」



教室中が一気に騒がしくなった。

そっと目線をあげる。教室はインフルエンザが流行った時のように所々に空席があった。

いつも授業中にこっそり目を合わせてはくすくす笑っていた方向に目を向ける。椅子は机の下にきっちり入れてある。


「ほれほれ騒ぐな。休み多い分係の仕事とか分担して手伝ってな。あと来週には山本らのお見舞い行くから、千羽鶴進めといて。じゃあ朝読始め」


はーい、とみんなが伸びをして机の中から本を取り出した。

お見舞い? 千羽鶴?

一体なんのことだろうと困惑気味に当たりをそっと伺う。すると担任が席の間を縫って僕の方へ歩いてきた。

先生は僕に折り紙を差し出した。



「松山、お前折り紙でツル折れるか?」

「ツル、ですか? はい……多分」

「先週から山本と濱谷が入院しててな。クラスみんなで千羽鶴作ろうって決めたんや。一人20枚折ってもらう事になってるから、今週中には作っといてな」