そんな親友を、ノブくんを、自分が助かりたい一心で殴るなんて僕には絶対に出来ない。
いや、やろうと思えばできる。でもどんな状況であっても僕は絶対にそれを選ばない。
差し出されたその手を取った僕のこの手は、今度はノブくんに差し出すためにある。殴るためなんかじゃない。助けるためにあるんだ。
「僕は絶対に殴らない……ッ! ノブくんは友達だ! こんな卑怯な誘いには絶対に乗らない!」
言葉に出せば力が湧いた。
そうだ。ノブくんは友達なんだ。アイツらが何を言おうと僕は今目の前にいるノブくんを信じる。
一番一緒に遊んで、沢山色んなことを話した。
誰よりも僕はノブくんを知っている。僕をいじめるヤツらの言葉よりも、これまで見てきたノブくんを信じる。
だからノブくんも、そうだろ?
確かに歯向かうのは怖いよ。でも、これまで辛い日々も二人でなら乗り越えられた。
だったら今だって、二人で立ち向かえばきっと────。
右頬に衝撃が走って、気が付けば教室の端の壁まで体が吹っ飛んだ。ダンッと激しく背中が壁にぶつかり、ずり落ちるように座り込んだ。
頭が理解するよりも先に、胸倉を掴まれ激しく揺すられた。
「う、うわぁあああッ!!」
霞む視界の先で、目を見開いてボロボロと涙を零しながら僕に馬乗りになるノブくんを見た。
何度も何度も胸ぐらを揺すられ、その度に頭にぐわんと響いた。