ばくん、と心臓がはねた。無意識に息を止めて居たのに気がつき、ハッと短く吐き出す。
床の上で蹲るノブくんを見下ろした。分かりやすいくらいにがたがたと震えている。
「教室でも必死に見て見ぬふりしてたな? またターゲットにされたら嫌やもんな?」
頭を抱えて床に突っ伏すノブくん。床の木のタイルが零れ落ちた涙でぼたぼたと濡れていく。
なんで。
「良かったなぁ、来光が転校してきて。友達おらんお前にも身代わりになってくれる都合のいい友達が出来たもんなぁ?」
にやにやと笑う嫌らしい笑い方だった。
でも今はそんなのどうでもよかった。
何で。ねぇ何で?
何で何も言ってくれないのノブくん。
それは違うって言ってよ。じゃないとまるでアイツらの言葉が合っているみたいじゃん。
違うよね?
都合のいい友達って。身代わりって。
だってノブくんから「友達になろう」って声をかけてくれたんだよ。サマーキャンプの一日目の夜、握手をしようって言ったのもノブくんからだったじゃん。
誰にもわかって貰えなかった苦しさを、僕たち二人は分かり合えたんじゃなかったの?
それが僕はどれだけ、どれだけ嬉しかったか。