教室の床に倒れ込んだノブくんに駆け寄った。慌ててその背中に手を伸ばすと微かに震えているのが分かった。


「来光……ッ」


ノブくんが顔を上げた。涙の膜が張った瞳が揺れる。


「待ってたでー、正信。やっと始められるわ」


嫌な笑い方をしたその瞬間、ノブくんが分かりやすくびくりと震えた。


「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい。やめてください、何でもするからやめてください……ッ」


頭を守るように蹲ったノブくんがまるでお経を唱えるかのように必死にそう言った。

そんな姿を見たクラスメイトたちがゲラゲラと笑い出す。

僕はそんな光景に困惑することしか出来なかった。


「おい正信、お前来光に教えてないんか? こいつが来る前までのこと!」

「や、やめて……言わんといてッ!」

「教えたれよ〜。オトモダチなら仲間はずれは良くないんとちゃう?」


そう言ったそいつの声は耳障りな音だった。



「────"来光が来るまでターゲットは僕でした。来光が来てくれたおかげで、僕はいじめられなくなりました"ってさぁ!」