顔を上げるとクラスの中でも特段素行の悪い、僕をいじるめる奴らの中心になっているクラスメイトだった。

「またか」と思うと同時に教室をさっと見回す。ノブくんはさっき係の仕事で先生に呼ばれていたから教室にはいない。

ホッと息を吐く。ノブくんはいつも僕がいじめられるところを見る度に、凄く苦しそうな顔をするから。


「何よそ見してんねん。聞いてんのかって!」


一人が日誌を振り上げた。咄嗟に両手で頭を庇うと、直ぐに腕に衝撃が走る。腕だったのでそこまで痛くはなかった。


「ほんまお前キショいな! 前の学校で問題起こした"問題児"のクセに、よおそんな顔してこの教室おれんな?」

「……問題なんて起こしてない」

「うわっ、喋りよった! ビョウゲン菌が伝染る〜!」


ギャハハ、と嫌な笑い声が教室に響いた。

残っていた女子達はヒソヒソと言葉を交わすと、変に関わりたくないのか早々と教室を出て行く。


「お前ほんまいい加減にしろや。俺らの教室におられるとメーワクやって、何度言うたら分かるん?」


ギュッと唇を噛み締めた。

どんなに悔しくてどんなに腹が立ってどんなに悲しくても、今言い返しちゃいけない事は分かっている。

今言い返せばもっと酷いことをされる。黙っていれば彼らはそのうち飽きて興味がなくなるんだから。