夜中に外へ出る時は懐中電灯を持ち歩くようにと事前に伝えられていたので、外に出て直ぐにスイッチを入れる。

それだけを頼るには心もとない光が足元を照らす。

月明かりは分厚い雲の奥に隠れている。名前の分からない虫と蛙が煩いくらいに鳴いていた。


二人してその場に固まる。


「は、早く行きなよノブくん。ちゃんと着いてくから」

「は、ハァ!? ライト持ってるの来光やんけ!」

「じゃあノブくんが持ってよ! 誘ったののぶくんなんだから!」

「いやや! じゃあ行かん!」


お互いに肩を押しあった末、この真夏の夜中に肩をピッタリくっつけあって並んで歩くことになった。懐中電灯も二人で仲良く持つ。

使っていいトイレはコテージに隣接された所にあって、公園の公衆トイレに近い。ドアはなく目隠しの衝立が入口にあって、蜘蛛の巣の貼った白熱灯がひとつだけ中を照らしている。個室は二つとも和式で、小便器は埃と砂でとても汚い。

朝到着して直ぐに確認した時、"嫌な感じ"はしなかったし紫暗の靄もなかった。問題ないのは分かっているのだけれど、こうも薄暗いと少し不気味だ。