おい、おい来光、起きろ……!

その日の夜、一通りのアクティビティが終わって風呂にも入り、慣れない寝袋に苦労しながらもようやっと寝付けそうだと言う時に肩を揺すられ目が覚めた。

同じテントで眠っていたノブくんが寝袋から抜け出し自分の枕元にしゃがんで顔をのぞきこんでいた。

ふわぁと欠伸をこぼし「どうしたの……?」と体を起こしながら目を擦る。

外はまだ真っ暗で虫の鳴き声が煩い。


「来光お前、トイレ行きたくない?」

「トイレ……? 別に今はいいかな……ねぇ寝ていい?」

「寝るな! 絶対今トイレ行っといた方がいいって!」


必死にそう言うノブくんにやがて頭がハッキリしてくる。何かを我慢するように落ち着きのない様子にピンと来た。


「もしかして、トイレついてきて欲しいの?」

「さ、誘ってるだけや! 勘違いすんな!」


暗闇の中でも分かるほど顔を赤くしたノブくんが僕の言葉に噛み付いた。

思わずプッと吹き出すと、「笑うなや!」とノブくんが一層顔を赤くして目を釣りあげた。


「暗いしちょっと怖いもんね。いいよ、付き合うよ」

「べ、べつに怖いからちゃう! 俺は一人で行けるけど、お前が夜中に一人で行けんくて起こされるのが嫌なだけや!」

「はいはい、それでいいよ。ほら、さっさと行こう!」


何か言いたげに「ううっ」と言葉を詰まらせたノブくんだったけれど、それ以上反論すれば僕に付き合って貰えないと思ったのか大人しくテントを抜け出した。