「うわーっ、ノブくんクワガタ! クワガタいるんだけど!」

「仕掛け作って一晩置いたらもっと集まるで!」

「ほんとに!? やりたい!」


夏休みに入ってしばらく経ち、待ちに待ったサマーキャンプが始まった。

キャンプ場は奈良県の山の中腹にある場所で、寝泊まりは基本自分が組み立てたテントの中で、グループ学習やグループ活動は近くにあるコテージで行われるらしい。

キャンプ場に着いてすぐ大学生のお兄さん達に連れられて山の中に入り、「自然探検」という活動が始まった。


土と木と葉の深い匂いを胸いっぱいに吸い込んでぐるりと辺りを見回す。

自然の多い場所へ遊びに来たのは生まれて初めてだ。


「来光、こっちにキノコ生えてるで!」

「本当に!?」


木の根元にしゃがみこむノブくんに駆け寄って手元をのぞき込む。


「食べれるかな!?」

「コテージにキノコ図鑑あったから持って帰って調べるで! 食えたら今日の晩飯のカレーにこっそり混ぜよや!」


二人してひゃひゃひゃ、と笑う。

群生するキノコをブチブチと引き抜いて虫かごに詰めた。


「ねぇ、ノブくん 」

「んあ?」


キノコを見聞していたノブくんが不思議そうに顔を上げた。