三好くんとは家が同じ方面で、一緒に帰るようになった。


「なぁ、来光! お前の塾の時間まで、公園で遊戯王やらん!?」

「でも僕カード持ってないし、やり方わかんないし……」

「そんなん俺が貸したるし教えたる!」


"三好くん"という他人行儀な呼び方から"ノブくん"にシフトチェンジするのにそう時間はかからなかった。


「ねぇノブくんっ、今度の土曜日習い事が休みになったんだ! 隣町のゲームセンター行こうよ!」

「まじ!? やりぃ! 行く行く!」

「ワニのやつ次は僕が勝つから!」

「何言うてんねん、一回も俺に勝ったことないくせに!」


その頃になって、僕へのいじめが始まった。上履きを隠されて教科書を破られノートを池に捨てられた。掃除の時間は箒で足を引っ掛けられ、体育のドッジボールは皆が顔を狙って投げた。

ノブくんはいつも教室の隅で顔を顰め目を逸らし身を小さくしていた。止めに入ってくれることもないし、話しかけてくれるのは教室に誰もいない時か放課後だけだった。でもそれで良かった。だってもし止めに入れば、今度はノブくんが標的になるかもしれない。

僕は無視されることも慣れてるし、虐められることも慣れている。それにもう前とは違う。だって────。


床に投げ捨てられたノートを拾ってランドセルにしまっていると、遠くに飛ばされていたらしい下敷きが目の前に差し出された。