どうしよう、足が動かない。声が出ない。怖い。逃げたい。嫌だ嫌だ嫌だ。
『お前ら全員殺してやる! 殺してやる殺してやる殺してやるッ!』
女が保護ガラスを叩いた。ミシ、と音を立ててヒビが入る。
友人たちがやっとその異変に気が付いた。
「センセー、なんか今変な音した!」
「あそこのガラス割れてね!?」
「本当に?」
先生が二人に駆け寄った。二人はヒビが入ったガラスの隅を指差す。あらほんと、と先生は目を瞬かせた。
「スタッフの人呼んでくるから、離れて待ってて」
「はーい!」
友人二人と先生がこちらへ歩いてくる。
女がガラスにグッと体を寄せた。
『呪ってやる、殺してやる!』
ミシミシ、音を立ててガラスのひびが広がる。のんびり歩いてくる友人たちと先生。
危ない、割れる。割れたら、死ぬ。
「は、走って……」
絞り出した声はあまりにも情けない。声が震えてみんなに届かない。
「なにー? 何か言った?」
「どうしたの松山くん」
みんなが不思議そうな顔をした。
ガラスのヒビがどんどん広がる。