禄輪さんは続きのアルバムを開けた。何も言わないので、どうやら一緒に見ていくつもりらしい。

傍に寄ってその手元を覗き込む。


白無垢姿のお母さんと、正装したお父さんの写真だ。梅の花が咲きみだれるどこかの社の本殿の前で撮影したようだ。



「懐かしいな、一恍と泉寿の神前式の時の写真か」

「お母さん綺麗……これはどこの社ですか?」

「かむくらの社だよ。事情があって二人が結婚式が出来ない状況だったから、私と志ようでこっそり企画してやったんだ」



次のページを捲った禄輪さん。

お父さんとお母さんに禄輪さん、そしてあの女の人が写っている。



「この人……志ようさん────先代の審神者(さにわ)だったんですね」

「ああ、そうだ」

「仲良しだったんですね」

「ああ……本当に」



写真に写る志ようさんの頬を指でそっと撫でた禄輪さん。昔を懐かしむように目を細める。その表情があまりにも優しくて、声をかけるのを一瞬戸惑った。



「かむくらの社って、そんなに簡単に立ち入っていい場所じゃないって学校で習ったんですけど……」



かむくらの社の参拝には色んな決まり事があるらしい。

そもそも場所を知っているのは本庁の一部の上層部のみで、その人たちですら年に一度の決められた日にしか参拝することは出来ないと聞いた。

それほど神聖で重要な場所だということだ。

細かいルールはもっと沢山あって「社史(しゃし)」の授業でそれを習った時、その社に泊まったなんて口が裂けても言えないと震えた。