グループでの課題学習もお昼に近くの公園でお弁当を食べた時も何も問題はなかった。

視界の隅を妖怪たちがちょこちょこと走っているのは見えたけれど、やっぱり自分達には興味がないのか振り向きもしなかった。

昼食後は自由行動で館内を好きに見て回って良い事になっていたので、その頃登校班が同じという事で仲の良かった友達二人と見て回る事にした。

郷土史資料館は思ったより退屈な場所ではなく、昔の家屋や食事のレプリカ、社会の教科書でしか見ないような古い機械や道具、とにかく不思議なものが沢山があって面白かった。


「ねぇ、僕トイレ行ってくる。ここで待ってて!」

「なんだよー、分かったから早くしろよ!」

「まだ江戸時代のエリア行けてないんだからな!」

「分かってるよ、急ぐから絶対待っててよ!」


文句を言う二人に念を押して、天井から吊るされた誘導看板を頼りに走り出した。

トイレの前まで来て紫暗の靄がかかった扉を前に、やっぱり二人も誘えばよかったと顔を顰めて一歩後ずさる。


他の場所でも平気だったんだからこの場所も大丈夫だよね? でもやっぱり一人で中へ入るのは。我慢して戻る? でも……。


ぐるぐると悩んでいた丁度その時、別のクラスの同級生たちが走りながらトイレへ飛び込んだ。

あ、と小さく声を上げていそいそとそれに続き中へ入る。


恐る恐る中を見渡すもどこにも妖怪の姿はなく、堪らず安堵の息を吐いた。