「お前がなにか悩んでてもどうでもいい。昔何かがあったとしてもどうでもいい。死神だろうと悪魔だろうと閻魔だろうと妖だろうと、どうでもいい。だって何があっても何を考えててもお前はお前だろ? 来光」


涙で濡れた目が見開かれる。


「俺は来光と遊びに出かけたいし、馬鹿やって叱られるならお前と泰紀と三人じゃなきゃ物足りねぇよ」


慶賀くんが人差し指で鼻を擦りながら、唇を尖らせてそう言った。


「そうだぞ、来光」


赤くなった顎を撫でた泰紀くんが笑う。


「お前はその退屈な脳ミソであーだこーだ考えて閉じこもってたみてぇだけど、そんなん知るかってんだ。お前の悩みなんて俺らにとっちゃ、その程度の事なんだよ! 夕飯の献立の方がよっぽど重要だつーの!」


来光くんがくしゃりと顔を歪めた。手の甲で頬を何度も拭う。


「来光が何に悩んでるのか俺達には分かんないけどさ、俺らが友達になったのは今ここにいる松山来光だよ」


来光くんの隣にかがんだ嘉正くんが勢いよく背中を叩いた。

痛いよ、と来光くんが呟く。泣きながら笑っている。大粒の涙がボロボロと溢れていた。