座り込む来光くんの前に仁王立ちした慶賀くんは、少し困ったようにガシガシと頭をかいた。


「……悪かったよ。引っ張ったのは謝る。でもそうしないとお前、一生俺らと喋る気なさそうな気がしたんだよ」


図星だったのか来光くんが体を小さくしてより俯く。


「あのさ、"僕がどれだけ"って言ってたよな? 来光は仮病使って引きこもってる間、色々考えてたんだろうけど、そんなん俺は知らねぇ。つかどーでもいい」


頬を引っぱたかれたように傷付いた顔をした来光くんは震える唇を噛み締めて、何かをこらえるように眉を寄せる。


「……どうでも、いいんだ」

「おう! クソほどどーでもいい!」


ふ、と乾いた笑みを浮かべた瞬間、その瞳に影が落ちた。

違う、そうじゃないの来光くん。私たちが言いたいのは────。


一歩前に出た瞬間、隣に立っていた嘉正くんが私の手首を掴んだ。小さく首を振った嘉正くんは「見守ろう」と小声で囁く。

もどかしい気持ちで唇を噛み締める。



「……どうでもいいなら、何で構うんだよ」


絞り出した声は切ない。

私まで泣きそうな気持ちになった。



「バーカ! どうでもいいから構うんだよ」



困惑した表情の来光くんが顔を上げた。