手を伸ばした慶賀くんががしりと布団を掴むと勢いよく手を引いた。
引き剥がした布団をそのまま放り投げる。投げ出された布団はそのまま私と嘉正くんが立つ方へ吹っ飛んできて、二人して「うわぁッ」と悲鳴をあげる。
「おい慶賀! ちょっとは周りを見て────」
「うわぁッ!」
今度は来光くんの悲鳴が聞こえた。慌てて布団を退けると、腕を掴まれ引っ張られた来光くんがベットから落ちる寸前だった。
ズダン、と痛そうな大きな音がした。顔から転んだ来光くんは弾けるように顔をあげると「何すんだよバカ慶賀!」と声を上げる。
「何考えてんの危ないだろ!?」
「お前がウジウジ引きこもってるから仕方なくやったんだろ、むしろ感謝しろよな!」
いつものように怒鳴る来光くんをしれっとかわす慶賀くん。
ハラハラしながら二人の顔を交互に見る。
「ふざけんなめちゃくちゃ過ぎるだろ! 僕がどれだけ……ッ」
言葉が途切れたのは、来光くんの堪えきれなくたった涙がまつ毛を超えたからだ。
赤い目元を乱暴に腕で擦った来光くんは顔を隠すように俯いた。
「何で……」
頼りない問いかけが届いた。